お知らせ

INFORMATION

「引用なのか」「転載なのか」~学術文献を利用した販促資材制作における転載許諾のルールを知る

はじめに

医薬・製薬業界では、学術的な文献を利用して販促資材を作成する際に著作権を考慮することが非常に重要です。
このような領域で販促資材を作成する場合、様々な学術的研究成果をまとめることはよくあります。
その際に「引用なのか=許諾の必要がない」「転載なのか=許諾の必要がある」という判断に迷われたお客様より、ご相談いただくことが多くあります。
そこで、本コラムでは資材を作成する際の利用許諾について、従来の理解を整理し紹介いたします。

著作権とは

「著作権」は人間の思想や感情の「表現」である文書や芸術作品などを保護する権利です。
著作権というと、多くの方が文学や美術品、音楽などを思い浮かべると思います。
新医薬品などの学術研究・製造過程で頻繁に利用される学術文献は「言語の著作物」に該当しますので、著作権法が適用されます。

【著作物の例】
音楽の著作物:楽曲・楽曲を伴う歌詞など
言語の著作物:小説・詩歌・脚本・論文(文献)・レポート・講演・俳句など
美術の著作物:マンガ・絵画・彫刻・書画・工芸品など
プログラムの著作物:コンピュータープログラムなど
その他の著作物:建築物・図表・模型・写真・映画・ビデオ・地図など

著作権法では、著作物を「思想又は感情を」「創作的に」「表現したもの」で、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しており、
文化庁では、『著作権』で守られる著作物であるためには下記の事項をすべて満たす必要があるとしています。

(1)「思想又は感情」を表現したものであること
→ 単なるデータが除かれます。

(2)思想又は感情を「表現したもの」であること
→ アイデア等が除かれます。

(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること
→ 他人の作品の単なる模倣が除かれます。

(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること
→ 工業製品等が除かれます。

出典:「著作物について」(文化庁)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu.html
(2022年12月12日に利用)

このように、表現された思想や感情に個性が表れているものを「著作物」といい、著作者に与えられる著作物の独占的利用権を「著作権」といいます。

『引用』は著作物の例外的な利用

他者の著作物を利用する場合には、原則として著作者本人または権利者から許諾を受けることが必要ですが、引用は著作物の例外的な利用法であり、著作権者の許諾を得ることなく利用することができます。
著作権法は、基本的に著作物を保護するものですが、「例外的」とみなされる特定の状況においては、著作権やその他の権利を制限することを認めています。
これにより、著作権者等の同意を必要としない利用が可能となるのです。

(著作権法32条)
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

適切な引用をするために、著作物の出所と著作者名の明示が必要であるため出典を記載します。
※著作権法48条1項1号、2項

適切な引用をするための、引用における注意事項についてご紹介します。

<引用における注意事項>
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
出典:「著作物が自由に使える場合」(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
(2022年12月12日に利用)

他者の著作物を引用する際に、上記の要件の範囲を超えて利用する場合には著作権者の許諾が必要です。
さらに、引用利用する際には、著作物の著作者人格権にも留意する必要があります。

・公表権(著作者が未公表の著作物を公表するかどうか等を決定する権利)
・氏名表示権(著作物に著作者名を表示するかどうか、表示する場合に名義をどうするかを決定する権利)
・同一性保持権(著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利)

著作者の名誉又は声望を害することの無いように、著作物を利用しなければなりません。
『引用』は例外的に認められている著作物の利用であるからこそ、丁寧な確認が必要です。

引用の範囲を超えると『転載』になる

他人の著作物を引用して利用する場合、引用の範囲内であれば、著作者の許諾無しに利用することが許されます。
しかし、引用の範囲を超えて他人の著作物を流布する場合には、転載の許可を得ることが義務づけられています。

引用か転載かの判断をするほかに、「(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること」の注意事項について、Web掲載に際する相談が増加しています。
特に動画については、時間の経過という要素が含まれている?ため判断に迷うことがあると思います。
そのような際に、当社では動画・静止画であっても、図や表などの転載利用は転載許諾の申請をお勧めしています。

グラフや表の数値データも、著作権保護の対象になるか?

試験結果のグラフに使用される数値データも、著作権保護の対象となります。
資材を制作する際、試験結果を表す数値データとグラフなどを転載して利用することが多くあります。
「このような数値データは著作権の対象になるのでしょうか?」という問い合わせは少なくありません。
数値データそのものは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではないため、著作権の条件を満たしません。

(編集著作物)
第十二条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
出典:著作権法 e-GOV法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048
(2022年12月14日に利用)

しかし、学術文献上の多くのいわゆる「データ」や「グラフ」は、単なる数値データやグラフではなく、その配列や見せ方に創作性が認められるものが相当数存在するため、著作権を有する出版社や学会は、事前に許諾を取得するように求めているのが実情です。

例えば某学会ではすべての転載は申請が必須という前提で、”営利目的・商業的利用の判断は学会側が行います”と明示されています。
著作権法違反とならない為に、事前に許諾が得られるかどうかを確認することが望ましいでしょう。

最後に

本コラムでは、学術資料を利用した資材制作における転載許諾の基本的なルールについて解説いたしました。
引用または転載の要件を理解することは、あらゆる販促資材の作成において必要不可欠です。

当社では、お客様の資材への図表転載の許諾申請に伴う、「引用」「転載」についてのご相談も受け付けております。
また、利用許諾申請の手続きは条件交渉・許諾書の受け取りまで、お客様と一体となって行います。


さらに、当社の運営する「SACRA MORE(サクラ モア)」では、

医学・薬学分野における著作物の著作権の権利処理をスムーズに行えます。

  • SACRA MOREのポイント
1.著作権料の見積り金額をWEB上でご確認いただけます。

見積依頼などのお申し込みは、所定のフォームに入力するだけ。
申請前の見積に、わずらわしいメールやFAXのやりとりは必要ありません。

2.進捗はすべてWEBページ上で。

WEBページ上で見積の進捗・金額が分かります。
スマホやPCから、いつでも、どこでもアクセス可能です。

3.経験豊富な許諾代行チーム。

15年間、学術著作物に携わっていた代表が率いる経験豊富なスタッフが
素早い対応と、プロフェッショナルなご提案でお客様の著作権申請をサポートいたします。

著作物の適切な転載利用申請に、ぜひご活用ください。

 

海外の最新論文や珍しい文献となると、大学図書館やデータベースではヒットしなかったり、権利元の特定に何日もかかったりすることも多いです。
でもSACRA MOREで著作物の利用申請を行えば、学術分野の専門ノウハウを駆使して、スピーディーに著作物の利用料金を調査し、許諾申請をサポートいたします。

現在、SACRA MOREの機能は、権利者へ交渉を行う前の見積調査のみですが、今後は権利者へ申請・交渉を行う際の進捗確認もWEBで対応できるよう、サービス改善を進めていきます。

販促資材制作のお供として、この機会にブックマークしていただければ幸いです。

WEB
https://sacra.genryu.net/

QRコード